住まい・建築へのアプローチ
<はじめに>
樋口章建築アトリエの考える住まいや建築は、建てる場所や規模、予算、使う人の考え方、スタイルにあわせて計画するため、いつも新しいものです。
その計画の進め方は、様々な希望条件や周辺環境にあわせて試行錯誤を繰り返しながら計画を練り、1つの家のかたち、1つの家のしくみ、1つの建築の形を模索し、進んでいきます。
その過程において、当アトリエが大事にしたいと思っていること、取り組んでいることが、住まいや建築を造る上でのベースとなっているのだと思います。
<1.住まい手とコラボレーションによる新しい住まいのかたち>
当アトリエが造る住まいは、住まい手がいなければ始まりません。住まい手の考えや、スタイルは常に多様で異なるため、その考えやスタイルを受け入れ、時間をかけて整理し、具体的な形へ一緒になってまとめていくことは常に新鮮です。しかも大変エネルギーの要る作業でもあります。時にはさまざまな条件や、意見の食い違いにより、壁にぶち当たる時もあります。そんな場合も互いに信頼しあい、密にコミュニケーションをはかり、意見を交換し、よりよい方法を考え抜きます。その結果、わたしたちと住まい手とのコラボレーションによって生み出されるものは、常にわくわくさせられ、新しい発見があり、かけがえのない新しい住まいのかたちとなることを目指しています。
<2.心に響く建築・住まいを創りたい>
音楽が人の心にやすらぎや勇気や、さまざまなことを与えてくれるように、建築空間もまた人の心に豊かさ、やすらぎや、さまざまなことをもたらし刺激してくれると考えます。 とりわけ住まいは人間にとって、もっとも大切な場所、戻る場所、よりどころとなる場所です。その住まいが心を開放し、力をあたえ、心を豊かになるように刺激をあたえ、そして心に響くような場所となるように常に考えて行きたいと思っています。
<3.シンプルで美しく30年後も愛せる住まいを>
住まいは同じ人が30年,40年と長く住み続けるものです。その間、少しずつライフスタイルも変化し、社会や環境も変化していきます。住まいもその変化を受け入れてなお、住まい手と共に活き活きとした状態で、いい意味で古くなっていく、朽ちてゆくようなあり方、味わいがでてくるようなあり方がいいと考えていす。それには住まい手にとっても、環境に対しても、変わらない、変わりにくい価値観の上になりたった多様性をも受けとめられる、おおらかさ、シンプルさ、又、古くなってもなお、愛せる、あせることのないシンプルな美しいさが大切だと思います。
<4.どう楽しく住まうか、それを考えましょう>
住まい造りはハードを造ることですが、そこに生活する人の生き方、あり方、楽しみ方といったソフトを受け入れる器を造ることだと思います。 昨今、さまざまな商業的な情報の為、住まいの性能やそれと関係した材料ばかりが目立って、いつの間にか住まいを考える=性能や材料を考えることが第一優先になってしまっているように思います。極端な言い方をすれば、部屋数や広さという物差しだけで出来た簡単な間取りで、家族構成や生活パターンを当てはめて納得させられている、または高性能な素材や性能、最新の住宅設備があることが住まいの価値だと思わされていると思います。 まず第一に大切にしたいのは、どう楽しく住まうかを考えることです。その上でその住まいや住まい手を支えるために必要な素材や性能、設備を考えたいと思っています。
住まい・建築への取り組み
<5.CM分離発注方式を利用したすまいづくり>
当アトリエでは全ての建築工事を工務店や建設会社に一括で発注する一般的な発注方式とは別に、基礎工事、大工工事、屋根工事、等々、施工業者別に工事を発注するCM分離発注方式での家づくりに取り組んでいます。これは、かかる工事費の透明化、元請業者の経費分の削減によるコストダウンが目的と同時に、発注者となる住まい手が、直接発注契約をすることにより、施工者、職人と近い関係で家づくりに参加することで、そのダイナミズムを堪能すること、楽しむことができる方法です。
詳しくは >>> —建築家と職人でつくる家—
<6.自然と共生するパッシブデザインへの取り組み>
パッシブデザインとは、太陽からの光、熱、そして地球環境における風や地熱といった自然エネルギーを上手に利用して、住まいを快適にしようという設計思想・設計手法のことを言います。日本では昔から軒を深くして小屋裏を大きくして、夏場の日射を遮り、内部にたまった熱気を小屋裏から排熱するする仕組みがありますが、これもパッシブデザインの一つです。また、冬場の日中、太陽の光を内部に取り込み、その熱を蓄える仕組みもそれにあたります。
当アトリエではそういった物理的なエネルギーを利用すると同時に、感覚的、感情的にも恵みを与えてくれるものとして光、熱、風(例えば木漏れ日、陽だまり、そよ風)、太陽のエネルギーによって育まれた緑や水を取り込み、自然と共生する住まいを造っていきたいと思っています。
<7.居心地のいい住まい・安全な住まいを実現するための高断熱化、高耐震化>
前述のパッシブデザインをする上で高断熱化は不可欠です。冬場の日中に蓄えたエネルギーが、断熱が不十分ではすぐに逃げてしまいます。その逆もしかりで、日射や外部の熱をを遮っている壁も、すぐに熱が伝わっては内部空間はすぐ暑くなってしまいます。暖房や冷房時においても同じことです。
また大きな空間を造ることで住まいは開放的な心地よさを手に入れることができますが、熱容量が増えることで、冬場、空間を温めるのにはより多くのエネルギーが必要です。一方で逃げていく熱が多ければなかなか温まらず、不快な空間になってしまいます。
当アトリエではコストはかかりますが、セルロースファイバーの断熱材や現場発泡断熱材(アイシネン)を採用することが多く、これは断熱性能においても優れていることはもとより、専門の業者による責任施工で行われ、その施工精度が高いことで、断熱材の性能をフルに発揮することが可能になります。
木造住宅の構造は通常、2階建ての場合、建築基準法(建築をを建てるうえでの守るべき法律)では、壁量計算と呼ばれる地震に耐える壁の質と量を計算し、基準をクリアすることが求められます。この方法は簡単にできるのですが、精度の高い方法ではなく、建物形状によっては、計算上確保した性能が発揮できない場合があります。そこで、鉄骨造やRC造で行う許容応力度計算、いわゆる構造計算を木造住宅でも行い、基準法の1.5倍の性能確保を目指しています。 近年、日本各地で地震が多発していて、安全だと言える地域はほとんどありません。そういった点からも高耐震化は必修事項ととらえ、デザインと同様、重要視しています。
<8.国産材の積極的な利用>
特に構造材においては日本で育った材木を使用していきたいと思っています。日本の高温多湿の風土に対して順応して成長していることにより、耐久性や防虫性にも優れていることや、その木目の柔らかさ美しさは、日本人の感性になじむものだと思っています。
昨今、話題になっているように日本の森林資源は十分に蓄えられています。1割、2割程度安価な外材、製品安定性がいい外材集成材におされ、国産材の利用は進んでいません。そのために林業にお金が回らずに、衰退が懸念されています。また、それにより山が荒れ、台風や大雨による災害、二酸化炭素の吸収、蓄積といった炭素循環の鈍化による温暖化防止機能の低下などが問題となっています。
当アトリエでは、少しでもそういった我々を取り巻く環境の改善の一助と啓蒙のために国産材を積極的に使っていきたいと思っています。
<9.耐震改修補助金を利用した安全で快適な住まいのリフォーム>
昭和56年以前に建てられた耐震性の劣る木造住宅に対して各都道府県で最大120万円程度の補助金がでる制度があります。
それを活用して耐震性、断熱性を改善し、ライフスタイルに合わせた快適な住まいのリフォームの提案を積極的に行っています。わずか40年弱で建て替えをするのではなく、今ある住宅ストックを直して使っていくことは、今の社会に求められる大切なことだと思っています。
<<<<<<<